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医療法人の定款と登記、定款例

書面にサインをする男性

医療法人の運営において、定款と登記は非常に重要な書類です。
これらは医療法人の基本的な情報を定め、公示するものであり、適切に管理し、理解しておくことが必要です。

本記事では、医療法人の定款と登記について詳しく解説し、定款例を示しながら重要なポイントを説明します。

定款とは

定款は、医療法人の「憲法」とも言える文書です。医療法人の目的、内部組織、運営に関する基本的なルールが記載されています。
医療法第44条に基づいて作成され、医療法人設立時に必ず作成する必要があります。

定款に記載すべき主な事項

  • 目的
  • 名称
  • 開設する医療機関の名称及び開設場所
  • 事務所の所在地
  • 資産及び会計に関する規定
  • 役員に関する規定
  • 理事会に関する規定
  • 社員総会及び社員資格の得喪に関する規定(社団医療法人の場合)
  • 解散に関する規定
  • 定款変更に関する規定
  • 公告の方法

登記とは

登記は、医療法人の重要な情報を社会に向けて公示し、それらを保護するための制度です。
医療法第43条に基づいて行われ、法人の設立、事務所の移転、その他登記事項の変更など、様々な場合に必要となります。

主な登記事項

  • 名称
  • 主たる事務所の所在地
  • 目的及び業務
  • 資産の総額
  • 役員に関する事項(理事長の氏名、住所など)

定款例と重要ポイント

以下に、医療法人社団の定款例を示し、重要なポイントを解説します。

医療法人社団○○会定款(抜粋)

第1章 名称及び事務所
第1条 本社団は、医療法人社団○○会と称する。
第2条 本社団は、事務所を東京都○○区○○町○丁目○番○号に置く。

第2章 目的及び事業
第3条 本社団は、診療所を経営し、科学的でかつ適正な医療を普及することを目的とする。
第4条 本社団の開設する診療所の名称及び開設場所は、次のとおりとする。
○○クリニック 東京都○○区○○町○丁目○番○号

第3章 資産及び会計
第10条 本社団の資産は次のとおりとする。
(1) 設立当時の財産
(2) 設立後寄附された金品
(3) 事業に伴う収入
(4) その他の収入

第4章 役員
第29条 本社団に、次の役員を置く。
(1) 理事 3名以上○名以内
うち理事長1名
(2) 監事 1名以上2名以内

第5章 社員
第17条 本社団の社員になろうとする者は、社員総会の承認を得なければならない。

第6章 社員総会
第20条 理事長は、定時社員総会を毎年2回、○月及び○月に開催する。

第7章 理事会
第37条 理事会は、すべての理事をもって構成する。

第8章 定款の変更
第44条 この定款は、社員総会の議決を経、かつ、東京都知事の認可を得なければ変更することができない。

第9章 解散及び合併
第45条 本社団は、次の事由によって解散する。
(1) 目的たる業務の成功の不能
(2) 社員総会の決議
(3) 社員の欠亡
(4) 他の医療法人との合併
(5) 破産手続開始の決定
(6) 設立認可の取消し

附則
第1条 本社団設立当初の役員は、次のとおりとする。
理事長 ○○ ○○
理事 ○○ ○○
理事 ○○ ○○
監事 ○○ ○○

定款の重要ポイント

  1. 名称と事務所(第1条、第2条)
    – 医療法人の正式名称と主たる事務所の所在地を明記します。
    – これらは登記事項でもあるため、変更する場合は定款変更と登記変更の両方が必要です。
  2. 目的と事業(第3条、第4条)
    – 医療法人の目的と具体的な事業内容(開設する医療機関の名称と所在地)を記載します。
    – 新たな医療機関を開設する場合は、定款変更が必要になります。
    – これらは登記事項でもあるため、変更する場合は定款変更と登記変更の両方が必要です。
  3. 資産及び会計(第10条)
    – 医療法人の資産の種類を列挙します。
    – 会計年度も定款で定める必要があります(例示では省略)。
  4. 役員(第29条)
    – 理事と監事の定数を定めます。
    – 医療法では理事3名以上、監事1名以上が必要とされています。
  5. 社員と社員総会(第17条、第20条)
    – 社員の資格取得方法と社員総会の開催頻度を定めます。
    – 社員総会は医療法人の最高意思決定機関です。
  6. 理事会(第37条)
    – 理事会の構成について定めます。
    – 理事会は業務執行の決定や理事の職務執行の監督を行います。
  7. 定款変更(第44条)
    – 定款変更の手続きを定めます。
    – 社員総会の議決と都道府県知事の認可が必要です。
  8. 解散事由(第45条)
    – 医療法人の解散事由を列挙します。
    – 医療法に定められた事由を記載する必要があります。
  9. 附則
    – 設立時の役員を記載します。
    – 設立後の役員変更は定款変更ではなく、役員変更届で対応します。

登記例と重要ポイント

以下に、医療法人の登記例(履歴事項全部証明書の一部)を示し、重要なポイントを解説します。

履歴事項全部証明書

法人名:医療法人社団○○会

会社法人等番号:0123456789012

名称:医療法人社団○○会

主たる事務所:東京都○○区○○町○丁目○番○号

法人成立の年月日:令和○年○月○日

目的等:
1. 本社団は、診療所を経営し、科学的でかつ適正な医療を普及することを目的とする。
2. 本社団の開設する診療所の名称及び開設場所は、次のとおりである。
○○クリニック 東京都○○区○○町○丁目○番○号

役員に関する事項:
理事長 ○○ ○○ 東京都○○区○○町○丁目○番○号

資産の総額:金○○○,○○○,○○○円

登記記録に関する事項:
令和○年○月○日設立

登記の重要ポイント

  1. 会社法人等番号
    – 13桁の番号で、法人を特定するために使用されます。
  2. 名称と主たる事務所
    – 定款の記載と完全に一致している必要があります。
  3. 法人成立の年月日
    – 医療法人の設立登記日が記載されます。
  4. 目的等
    – 定款の目的と事業の記載と一致している必要があります。
  5. 役員に関する事項
    – 医療法人の場合、理事長のみが登記事項となります。
  6. 資産の総額
    – 毎年更新が必要です。決算確定後3ヶ月以内に変更登記をする必要があります。
  7. 登記記録に関する事項
    – 設立登記日や、その後の重要な変更事項が記載されます。

定款と登記の関係

定款と登記は密接に関連しています。定款に記載された事項の多くが登記事項となるため、定款を変更する場合は、多くの場合で登記の変更も必要になります。

主な関連事項

  • 名称
  • 主たる事務所の所在地
  • 目的及び事業内容
  • 理事長の氏名

これらの事項を変更する場合は、以下の手順が必要です。

  1. 社員総会での議決
  2. 都道府県知事の認可(定款変更)
  3. 法務局での変更登記

まとめ

医療法人の定款と登記は、法人の基本情報を定め、公示する重要な書類です。
これらを適切に管理し、必要に応じて更新することは、医療法人の適切な運営と法令遵守のために不可欠です。

定款や登記の内容を十分に理解し、変更が必要な場合は適切な手続きを踏むことが重要です。
不明な点がある場合は、行政書士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。

また、定期的に定款と登記の内容を確認し、実際の医療法人の運営状況と齟齬がないかをチェックすることも大切です。
これにより、将来的な問題を未然に防ぎ、スムーズな医療法人運営につながります。

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事務所代表・記事監修
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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
現在、行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講中。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版予定。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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