診療所移転の定款変更の登記事項証明書(医療法人)と医療法人の概要の作成方法について

医療法人が診療所を移転する際には、定款変更認可申請の添付書類として「登記事項証明書(医療法人)」と「医療法人の概要」の提出が必要です。
これらの書類は医療法人の基本情報を示すもので、都道府県等による審査の際に重要な判断材料となります。
本記事では、診療所移転に伴う登記事項証明書(医療法人)の取得方法と医療法人の概要の作成方法について詳しく解説します。
登記事項証明書(医療法人)について
登記事項証明書とは
登記事項証明書(履歴事項全部証明書)は、医療法人の基本情報(名称、所在地、目的、理事長、理事、監事、資産総額など)が法的に証明された公的書類です。
法務局で発行され、医療法人の登記情報を公的に証明するものとして、様々な手続きで使用されます。
定款変更認可申請時には、医療法人の現状を確認するための資料として、最新の登記事項証明書の提出が求められます。
登記事項証明書の取得方法
登記事項証明書は、以下の方法で取得することができます。
法務局窓口での取得
- 最寄りの法務局(登記所)に行きます。
- 申請書に必要事項(医療法人の名称、所在地など)を記入します。証明書発行請求機が設置されている法務局もあります。
- 手数料(1通につき600円)を支払います。
- 即日発行されます(混雑状況によっては待ち時間があります)。
インターネットでの取得
- 登記・供託オンライン申請システム(https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/)にアクセスします。
- 「登記事項証明書の交付請求」を選択します。
- 必要事項(医療法人の名称、所在地など)を入力します。
- 手数料(1通につき600円)をクレジットカードやペイジーで支払います。
- PDFデータがダウンロードできる場合と、郵送で届く場合があります。
登記事項証明書の有効期限
登記事項証明書には、明確な有効期限はありませんが、一般的には発行後3~6か月以内のものが求められます。
定款変更認可申請の際は、なるべく新しいものを提出するようにしましょう。
登記事項証明書に記載される主な項目
医療法人の登記事項証明書には、主に以下の項目が記載されています。
- 商号(名称):「医療法人社団〇〇会」など
- 本店(主たる事務所):主たる事務所の所在地
- 目的:医療法人の目的(「診療所を経営し、科学的でかつ適正な医療を普及する」など)
- 資産の総額:毎事業年度終了後に変更登記する資産総額
- 役員に関する事項:理事長、理事、監事の氏名、住所、就任日など
- 登記記録に関する事項:設立登記日、資産総額変更登記日など
定款変更認可申請時の注意点
定款変更認可申請の際は、以下の点に注意して登記事項証明書を準備します。
- 最新の情報を反映:最新の情報が反映された登記事項証明書を提出します。特に、資産総額変更登記や役員変更登記が未了の場合は、先に登記を済ませてから取得することをお勧めします。
- 提出部数:通常2部(正本1部、副本1部)が必要です。副本はコピーでも構いませんが、正本は原本の提出が求められることが多いです。
- 登記上の所在地と移転前所在地の一致:登記事項証明書に記載された主たる事務所の所在地と、現行定款に記載された所在地が一致していることを確認します。一致していない場合は、先に登記を修正してから定款変更認可申請を行う必要があります。
医療法人の概要の作成方法
医療法人の概要とは
医療法人の概要は、医療法人の基本情報をまとめた書類で、定款変更認可申請の添付書類として提出します。
この書類により、都道府県等は医療法人の現状や組織構成を把握することができます。
医療法人の概要の基本構成
医療法人の概要は、都道府県等によって様式が異なる場合がありますが、一般的に以下の項目を含みます。
- 基本情報:設立認可年月日、設立登記年月日、法人の種類など
- 事務所の所在地:主たる事務所の所在地(移転前・移転後)
- 目的:医療法人の目的
- 設立代表者:医療法人の設立時の代表者
- 理事及び監事:現在の理事長、理事、監事の氏名、役職など
- 開設している医療施設:現在開設している診療所等の情報と、移転に伴う変更内容
医療法人の概要の記載例
以下は、東京都の様式を例にした医療法人の概要の記載例です(一部簡略化しています)。
医 療 法 人 社 団 〇 〇 会 の 概 要
設立認可年月日 平成〇〇年〇〇月〇〇日 設立登記年月日 平成〇〇年〇〇月〇〇日
法人の種類 ① □財団 ■社団(□出資持分なし ■出資持分あり)
② □社会医療法人 □特定医療法人 □出資額限度法人 □その他
事務所の所在地
(移転前)〒100-0001 東京都千代田区丸の内四丁目7番7号 丸の内ビル101号
(移転後)〒100-0001 東京都千代田区丸の内三丁目5番1号 東西ビル202号
目 的 診療所を経営し、科学的でかつ適正な医療を普及すること。
設立代表者 〇〇 〇〇
理事及び監事
役 職 氏 名 理事長との続柄 備 考
理事長 〇〇 〇〇 医療法人社団〇〇会
西北クリニック 管理者
理 事 〇〇 〇〇
理 事 〇〇 〇〇
監 事 〇〇 〇〇
計 〇名
開設している医療施設
(廃 止)
医療機関名 医療法人社団〇〇会 西北クリニック
所在地 〒100-0001 東京都千代田区丸の内四丁目7番7号 丸の内ビル101号
開設年月日 平成〇〇年〇〇月〇〇日
管理者名 〇〇 〇〇
診療科目 内科、消化器内科
(新 規)
医療機関名 医療法人社団〇〇会 西北クリニック
所在地 〒100-0001 東京都千代田区丸の内三丁目5番1号 東西ビル202号
開設予定年月日 令和〇〇年〇〇月〇〇日
管理者名 〇〇 〇〇
診療科目 内科、消化器内科
医療法人の概要の作成手順
医療法人の概要を作成するには、以下の手順で進めます。
- 都道府県等の様式を確認:各都道府県等のホームページから様式をダウンロードするか、担当部署に問い合わせて入手します。
- 登記事項証明書の情報を転記:設立認可年月日、設立登記年月日、主たる事務所の所在地(移転前)、目的、設立代表者などの情報を登記事項証明書から正確に転記します。
- 移転前後の情報を記載:移転前後の主たる事務所の所在地を記載します。この所在地は、現行定款や定款変更案と完全に一致させる必要があります。
- 理事及び監事の情報を記載:最新の役員変更届に基づいて、理事長、理事、監事の情報を記載します。
- 開設している医療施設の情報を記載:移転前の診療所情報を「(廃止)」として、移転後の診療所情報を「(新規)」として記載します。
作成時の注意点
所在地表記の統一
所在地の表記は、定款、新旧条文対照表、登記事項証明書と完全に一致させることが重要です。
- 住居表示か地番かを確認し、自治体のルールに従った表記をします。
- 「丁目」「番」「号」の表記を正確に行います。
- ビル名・部屋番号まで正確に記載します。
- 漢数字と算用数字の使い分けは自治体のルールに従います。
組織構成の整合性
理事及び監事の情報は、登記事項証明書や最新の役員変更届と整合性を取ることが重要です。
- 理事長、理事、監事の氏名は正確に記載します。
- 理事長が診療所の管理者を兼ねている場合は、備考欄にその旨を記載します。
- 理事長との続柄を記載する欄がある場合は、適切に記載します(「配偶者」「子」など)。
診療所情報の正確性
開設している医療施設の情報は、保健所の許可証等と整合性を取ることが重要です。
- 診療所の名称、所在地、開設年月日、管理者名、診療科目を正確に記載します。
- 移転前の診療所は「(廃止)」として、廃止予定日(通常、移転日の前日)を記載します。
- 移転後の診療所は「(新規)」として、開設予定日(通常、移転日)を記載します。
登記事項証明書と医療法人の概要の関連性
登記事項証明書と医療法人の概要は、医療法人の基本情報を示す書類として、相互に関連しています。
両者の整合性を確保することが重要です。
整合性の確保
以下の点について、登記事項証明書と医療法人の概要の整合性を確認します。
- 医療法人の名称:正式名称(「医療法人社団〇〇会」など)が一致していることを確認します。
- 主たる事務所の所在地:登記事項証明書に記載された所在地と、医療法人の概要の移転前所在地が一致していることを確認します。
- 目的:登記事項証明書に記載された目的と、医療法人の概要の目的が一致していることを確認します。
- 理事長、理事、監事:登記事項証明書に記載された役員情報と、医療法人の概要の役員情報が一致していることを確認します。
不一致がある場合の対応
登記事項証明書と医療法人の概要の間に不一致がある場合は、以下の対応を検討します。
- 登記の修正:登記事項証明書の情報が最新でない場合は、必要な登記(資産総額変更登記、役員変更登記など)を行い、最新の情報に更新します。
- 医療法人の概要の修正:医療法人の概要の記載が正確でない場合は、登記事項証明書に基づいて修正します。
- 過去の届出との整合性確認:過去に都道府県等に提出した役員変更届などと不一致がある場合は、まずその不一致を解消してから定款変更認可申請を行います。
登記事項証明書(医療法人)の最新化
定款変更認可申請を円滑に進めるためには、登記事項証明書の情報が最新であることが重要です。
以下の点について確認し、必要に応じて登記を最新化します。
資産総額変更登記
医療法人は、毎事業年度終了後3か月以内に資産総額変更登記を行う必要があります。
未了の場合は、速やかに登記を行いましょう。
理事長変更登記
理事長に変更があった場合は、変更から2週間以内に登記する必要があります。
未了の場合は、速やかに登記を行いましょう。
理事長重任登記
医療法人の理事長は、通常2年に1回の改選があります。
理事長が重任する場合も登記が必要です。
未了の場合は、速やかに登記を行いましょう。
医療法人の概要の更新
医療法人の状況が変わった場合(役員変更、診療科目の追加など)は、医療法人の概要も更新する必要があります。
以下の点について確認し、必要に応じて更新します。
役員変更時の更新
理事長、理事、監事に変更があった場合は、都道府県等に役員変更届を提出します。
それに伴い、医療法人の概要も更新し、最新の役員情報を反映させます。
診療科目変更時の更新
診療科目に変更があった場合は、保健所に届出を行い、また医療法人の概要も更新します。
医療法人の概要作成のためのチェックリスト
医療法人の概要を正確に作成するためのチェックリストを以下に示します。
基本情報のチェックリスト
- 医療法人の正式名称は正確に記載されているか
- 設立認可年月日と設立登記年月日は正確に記載されているか
- 法人の種類(社団・財団、持分の有無など)は正確にチェックされているか
- 事務所の所在地(移転前・移転後)は定款の記載と完全に一致しているか
- 目的は登記事項証明書の記載と一致しているか
- 設立代表者は正確に記載されているか
役員情報のチェックリスト
- 理事長、理事、監事の氏名は正確に記載されているか
- 理事長との続柄(該当する場合)は適切に記載されているか
- 備考欄(管理者兼任など)は適切に記載されているか
- 理事及び監事の合計人数は正確か
診療所情報のチェックリスト
- 移転前の診療所情報は「(廃止)」として正確に記載されているか
- 移転後の診療所情報は「(新規)」として正確に記載されているか
- 診療所の名称、所在地、開設(予定)年月日、管理者名、診療科目は正確に記載されているか
- 移転前後で診療科目に変更がある場合、適切に反映されているか
まとめ
診療所移転に伴う定款変更認可申請において、登記事項証明書(医療法人)と医療法人の概要は医療法人の基本情報を示す重要な書類です。
これらの書類を適切に準備・作成することで、定款変更認可申請の審査をスムーズに進めることができます。
特に重要なポイントは以下の通りです。
- 登記事項証明書の最新化
– 資産総額変更登記や役員変更登記が未了の場合は、先に登記を済ませる
– 発行後なるべく新しい登記事項証明書を提出する - 医療法人の概要の正確性
– 所在地表記を定款や登記事項証明書と統一する
– 役員情報を最新の状況と一致させる
– 診療所情報を「(廃止)」と「(新規)」に分けて明確に記載する - 両書類の整合性
– 登記事項証明書と医療法人の概要の情報に不一致がないか確認する
– 不一致がある場合は、適切に修正する
これらのポイントを押さえ、丁寧に書類を準備・作成することで、定款変更認可申請をスムーズに進めることができます。
都道府県等によって要求される様式や内容が異なる場合がありますので、必ず事前に確認することをお勧めします。
移転という大きな節目を無事に乗り切り、新しい環境での診療がスムーズに始められるよう、計画的に準備を進めましょう。
