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診療所移転の定款変更申請書類作成後の流れと登記申請

登記申請

医療法人が診療所を移転する際には、定款変更認可申請が必要となります。

書類作成が完了したら、次は都道府県等への提出と審査、認可取得後の登記申請という流れになります。

本記事では、定款変更認可申請書類作成後の流れと登記申請の手続きについて詳しく解説します。

定款変更認可申請書類の提出から認可までの流れ

素案提出(仮申請)

定款変更認可申請では、まず事前審査用に素案を提出します。東京都の場合は「仮申請」と呼びます。
この段階では、通常、押印は不要で、謄本等の証明書もコピーで問題ありません。

素案提出の手順
  • 事前連絡:都道府県等の担当部署に連絡し、素案提出の予約をします。都道府県等によっては予約不要の場合もあります。
  • 素案の準備:必要書類一式を揃えます。通常2部(正本1部、副本1部)準備します。
  • 提出方法:窓口持参または郵送で提出します。窓口持参の場合は、担当者との面談も可能です。
  • 確認事項:提出時に、以下の点を担当者に確認するとよいでしょう。
    – 不足書類はないか
    – 本申請までの大まかなスケジュール
    – 事前審査の進め方や連絡方法
素案提出時の注意点
  • 押印不要:素案提出時は通常、押印は不要です。不要な押印のために理事長や管理者に負担をかけないよう注意しましょう。
  • 資料のコピー:謄本等の証明書はコピーで構いません。原本は本申請時に提出します。
  • 移転計画の説明:担当者に移転計画の概要を説明できるよう準備しておくとよいでしょう。

事前審査への対応

素案を提出すると、都道府県等の担当者による事前審査が始まります。
審査の過程で修正指示があれば、それに従って書類を修正します。

事前審査の進め方
  • 修正依頼の受領:担当者からメールや電話で修正依頼が来ます。
  • 書類の修正:指示に従って書類を修正し、再提出します。
  • 複数回のやり取り:審査内容によっては、数回のやり取りが必要になることもあります。
事前審査での主な指摘事項
  • 所在地表記の修正:「丁目」「番」「号」の表記や漢数字と算用数字の使い方など、所在地表記に関する指摘が多いです。
  • 予算書の数字の不一致:収入と支出の合計が一致していない、内訳と総額が一致していないなどの指摘があります。
  • 社員総会議事録の不備:必要な議案や決議内容が不足している、押印予定者の記載漏れなどの指摘があります。
  • 医療法人の概要の誤記:役員情報や診療所情報の誤りなどの指摘があります。

本申請の準備

事前審査が完了し、修正した最終版の書類が担当者に承認されると、本申請の準備に入ります。

本申請の準備手順
  • 押印の手配:社員総会議事録、管理者就任承諾書などに必要な押印を手配します。通常、理事長印や管理者の実印での押印が必要です。
  • 証明書類の準備:登記事項証明書、印鑑証明書などの原本を準備します。発行後3~6か月以内のものが求められることが多いです。
  • 最終版の印刷:承認された最終版の書類を必要部数印刷します。
  • 製本:書類一式をまとめて、クリップやホチキスで綴じます。製本方法については都道府県等の指示に従ってください。
本申請準備時の注意点
  • 余裕を持った準備:押印や証明書の準備には時間がかかることもあるため、余裕を持って準備しましょう。
  • 押印漏れの防止:社員総会議事録には出席社員全員と出席役員の押印が必要です。押印漏れがないよう確認しましょう。
  • 捨印の準備:万が一の修正に備えて、理事長印や管理者の実印の捨印を用意しておくとよいでしょう。

本申請の実施

準備が整ったら、本申請を行います。

本申請の手順
  • 申請日の予約:必要に応じて、都道府県等に本申請の日程を予約します。
  • 提出方法:窓口持参または郵送で提出します。窓口持参の場合は、担当者に直接説明することもできます。
  • 手数料の支払い:都道府県等によっては、申請手数料が必要な場合があります。支払方法を確認して準備しましょう。
  • 受付印の受領:窓口持参の場合は、控えに受付印を押してもらいます。郵送の場合は、別途受付証明を発行してもらうこともあります。
本申請時の注意点
  • 原本の確認:原本提出が必要な書類(登記事項証明書、印鑑証明書など)が揃っているか確認します。
  • 正副の確認:正本と副本の区別がついているか確認します。正本には原本を添付し、副本にはそのコピーを添付します。
  • 持参物の確認:申請書類一式、手数料(必要な場合)、身分証明書などを忘れずに持参します。

審査と認可

本申請後、都道府県等による本審査が行われ、問題がなければ認可されます。

審査と認可の流れ
  • 本審査:担当者が申請書類を詳細に審査します。不明点があれば連絡が入ります。
  • 認可の決定:審査で問題がなければ、認可が決定します。通常、本申請から1~2週間程度で認可が下ります。
  • 認可書の受領:認可が下りると、担当者から連絡があり、認可書を受け取ることができます。認可書の受取方法には、窓口での受取と郵送があります。
認可書受領時の注意点
  • 認可書の確認:認可書の内容(医療法人名、所在地など)に誤りがないか確認します。
  • 複数部数の準備:認可書は登記申請にも使用するため、必要に応じて正本のコピーを取っておきます。ただし、登記申請には認可書の原本が必要ですので、コピーは控えとして保管します。
  • 保管:認可書は重要書類ですので、安全に保管します。

登記申請の手続き

定款変更の認可を受けたら、次は法務局での登記申請を行います。
登記申請は通常、司法書士に依頼することが多いですが、自分で行うこともできます。

登記申請前の準備

司法書士への依頼
  • 司法書士の選定:医療法人の登記に詳しい司法書士を選びます。過去に医療法人の登記をお願いしたことのある司法書士に依頼するのがベストです。
  • 必要書類の確認:司法書士と打ち合わせ、必要書類を確認します。
  • 費用の確認:登記申請の費用(司法書士報酬と登録免許税)を確認します。
自分で行う場合の準備
  • 管轄法務局の確認:医療法人の主たる事務所の所在地を管轄する法務局を確認します。
  • 申請書の様式入手:法務局のウェブサイトから登記申請書の様式をダウンロードするか、法務局窓口で入手します。
  • 登録免許税の計算:登録免許税を計算します。定款変更登記の場合、通常3万円です。

登記申請に必要な書類

登記申請には、主に以下の書類が必要です。

  • 登記申請書:定款変更の内容を記載した申請書です。
  • 定款変更認可書:都道府県等から交付された認可書の原本です。
  • 社員総会議事録:定款変更を決議した社員総会の議事録です。
  • 委任状:司法書士に依頼する場合、委任状が必要です。
  • 登録免許税の領収証書:登録免許税を納付した証明書です。

司法書士に依頼する場合の流れ

司法書士への書類提出
  • 認可書の引渡し:定款変更認可書の原本を司法書士に渡します。この時点で、認可書の内容を確認し、コピーを取っておきます。
  • その他書類の提出:社員総会議事録や委任状など、必要書類を司法書士に提出します。
  • 押印:司法書士が作成した申請書類に必要な押印を行います。
司法書士による申請と処理
  • 申請書の作成:司法書士が登記申請書を作成します。
  • 登録免許税の納付:司法書士が登録免許税を納付します。
  • 申請の実施:司法書士が法務局に申請を行います。
  • 登記完了の連絡:登記が完了すると、司法書士から連絡があります。
  • 登記事項証明書の取得:司法書士が新しい登記事項証明書を取得します。

自分で行う場合の流れ

申請書の作成
  • 申請書の入手と記入:登記申請書の様式を入手し、必要事項を記入します。
  • 添付書類の準備:定款変更認可書の原本、社員総会議事録などの添付書類を準備します。
登録免許税の納付
  • 納付書の入手:法務局または郵便局で登録免許税の納付書を入手します。
  • 納付:銀行または郵便局で登録免許税を納付し、領収証書を受け取ります。
申請の実施
  • 法務局への訪問:必要書類を持って法務局を訪問します。
  • 申請窓口での手続き:窓口で申請書と添付書類を提出し、受付印を受け取ります。
  • 処理の待機:登記の処理が完了するまで待ちます(通常1~2週間程度)。
  • 完了の確認:法務局に問い合わせるか、オンラインで登記情報を確認して完了を確認します。
  • 登記事項証明書の取得:法務局で新しい登記事項証明書を取得します。

登記申請時の注意点

  • 認可書の原本:登記申請には定款変更認可書の原本が必要です。原本は登記申請後、法務局に保管されますので、必ずコピーを取っておきましょう。
  • 所在地表記の一致:登記申請書に記載する所在地と、定款変更認可書の所在地表記が完全に一致していることを確認します。
  • 登記申請のタイミング:定款変更の認可を受けた後、2週間以内に登記申請を行うことが望ましいです。登記が遅れると、保健所や厚生局での手続きも遅れる可能性があります。
  • 登記完了の期間:登記申請から完了までに通常1~2週間程度かかります。移転のスケジュールに余裕を持たせましょう。

登記完了後の対応

登記事項証明書の取得

登記が完了したら、新しい登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を取得します。
この証明書は、保健所や厚生局での手続きに必要です。

取得方法
  • 法務局窓口での取得:法務局の窓口で申請します。
  • オンラインでの取得:登記・供託オンライン申請システムを利用して取得します。
  • 司法書士による取得:司法書士に依頼している場合は、司法書士が取得してくれることが多いです。
取得時の注意点
  • 必要部数の確認:保健所や厚生局での手続きに何部必要か確認し、余裕を持って取得しましょう。
  • 内容の確認:取得した登記事項証明書の内容(特に主たる事務所の所在地)が正しいか確認します。

保健所への提出

登記完了後、登記事項証明書を添付して保健所に診療所開設許可申請を行います。

保健所提出時の注意点
  • 完了謄本の必要性:保健所によっては、登記完了後の登記事項証明書(完了謄本)の提出が必須の場合があります。
  • 登記申請中の対応:登記完了を待っていると保健所の手続きが遅れる場合は、登記申請の「受付のお知らせ」等で対応できないか、事前に保健所に相談しましょう。
  • 原本提示の要否:定款変更認可書の原本は法務局に保管されるため、保健所に提示することはできません。この点を事前に保健所に説明し、コピーでの対応が可能か確認しましょう。

厚生局提出時の注意点

登記完了後、保健所の手続きを経て、厚生局に保険医療機関の指定申請を行います。

保健所提出時の注意点
  • 保健所の副本:厚生局への申請には、保健所での手続き書類の副本(写し)が必要になります。
  • 締切日の確認:厚生局の申請締切日(通常、毎月10日頃)を確認し、それに間に合うよう手続きを進めましょう。
  • 新医療機関コード:厚生局の申請後、新しい医療機関コードが付与されます。このコードは保険診療を行う上で重要ですので、確認次第メモしておきましょう。

登記申請のためのチェックリスト

登記申請をスムーズに行うためのチェックリストを以下に示します。

登記申請前のチェックリスト

  • 定款変更認可書の原本を受領したか
  • 認可書の内容(医療法人名、所在地など)に誤りがないか
  • 認可書のコピーを取ってあるか
  • 司法書士に連絡し、必要書類を確認したか
  • 登記申請の費用を確認したか

司法書士への提出書類のチェックリスト

  • 定款変更認可書の原本
  • 社員総会議事録(原本または写し)
  • 委任状(司法書士の指示に従って作成)
  • その他司法書士が指定した書類

登記完了後のチェックリスト

  • 登記が完了したことを確認したか
  • 新しい登記事項証明書を取得したか
  • 登記事項証明書の内容に誤りがないか
  • 必要部数の登記事項証明書を準備したか
  • 保健所や厚生局への提出準備ができているか

まとめ

診療所移転に伴う定款変更認可申請書類作成後の流れと登記申請は、時間と手間のかかるプロセスですが、計画的に進めることで問題なく完了させることができます。

特に重要なポイントは以下の通りです。

  • 素案提出から認可までの流れを理解する
    – 素案提出(仮申請)→事前審査→本申請→認可というステップを踏む
    – 各段階で必要な書類や押印、証明書を適切に準備する
  • 登記申請の手続きを適切に行う
    – 司法書士への依頼や自分で行う場合の準備を整える
    – 認可書の原本やコピーの取扱いに注意する
    – 登記完了後の登記事項証明書を確実に取得する
  • 保健所・厚生局との連携を密にする
    – 登記完了のタイミングと保健所・厚生局の手続きの関係を理解する
    – 登記事項証明書の必要部数を事前に確認する
    – 締切日を意識してスケジュールを管理する

これらのポイントを押さえ、丁寧に手続きを進めることで、スムーズな診療所移転が実現できます。

都道府県等や法務局によって手続きの詳細が異なる場合がありますので、必ず事前に確認することをお勧めします。

移転という大きな節目を無事に乗り切り、新しい環境での診療がスムーズに始められるよう、計画的に準備を進めましょう。

事務所情報
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事務所代表・記事監修
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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
現在、行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講中。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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