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医療法人の日常業務の進め方

手順に沿った進め方

医療法人の運営において、日常業務を適切に進めることは非常に重要です。

本記事では、医療法人の日常業務の進め方について、定時業務と臨時業務に分けて詳しく解説します。
各手続きの具体的な流れや注意点を押さえ、円滑な法人運営に役立ててください。

定時業務の進め方

定時業務とは、毎年または定期的に発生する業務のことです。主な定時業務には以下のものがあります。

  1. 決算届(事業報告)、経営情報の報告
  2. 役員変更届(改選)
  3. 登記
  4. 登記届

これらの業務を進めるにあたり、まず準備する資料は以下の通りです。

  • 過去の手続き資料(前回の届出書類など)
  • 今回の手続き用資料
    – 決算報告書(会計事務所から取り寄せる)
    – 役員に変更がある場合は、新役員の資料

それでは、具体的な進め方を見ていきましょう。

役員改選ではない年の進め方

  1. 確定申告終了後、会計事務所から決算報告書等の資料を取り寄せる。
    (例:3月決算の医療法人であれば、5月末以降)
  2. 役所のホームページや電話で、提出先、様式、必要書類等を確認する。
  3. 確認した様式に従い、手続き書類を作成する。
  4. 押印が必要な書類に押印してもらう。
  5. 役所に必要部数を郵送し、控えの返送を待つ。
  6. 手続きが完了したら、控え等を整理する。

役員改選の年の進め方

  1. 確定申告終了後、会計事務所から決算報告書等の資料を取り寄せる。
    (例:3月決算の医療法人であれば、5月末以降)
  2. 役員に変更がある場合は、変更内容を確認する(新旧役員の氏名等)。
  3. 役所のホームページや電話で、提出先、様式、必要書類を確認する。
  4. 新役員が就任する場合は、新役員の必要書類(印鑑証明書の原本、履歴書など)を手配する。
  5. 確認した様式に従い、手続き書類を作成する。
  6. 押印が必要な書類に押印してもらう。
  7. 役所に必要部数を郵送し、控えの返送を待つ。
  8. 手続きが完了したら、控え等を整理する。

【注意点】
・役員の任期は定款で確認しましょう。通常は2年です。
・設立時役員の任期は、定款末尾の附則で確認できます。
・理事長の任期は、医療法人の登記事項証明書でも確認可能です。
・管理者は、少なくとも管理者就任日には理事に就任していることを確認しましょう。

臨時業務の進め方

臨時業務は、定時業務以外に不定期で発生する業務です。主な臨時業務には以下のものがあります。

  1. 任期途中での役員変更
  2. 管理者(院長)交代

これらの業務の進め方について、詳しく見ていきましょう。

任期途中での役員変更

理事・監事交代の場合

  1. 役員変更(任期途中)が決まり次第、変更内容を確認する。
    (新旧役員の氏名、変更日、変更理由等)
  2. 役所のホームページや電話で、提出先、様式・必要書類を確認する。
  3. 必要書類(新役員の印鑑証明書の原本、履歴書など)の手配をする。
  4. 確認した様式に従い、手続き書類を作成する。
  5. 押印が必要な書類に押印してもらう。
  6. 役所に必要部数を郵送し、控えの返送を待つ。
  7. 手続きが完了したら、控え等を整理する。

理事長交代の場合

  1. 理事長交代(任期途中)が決まり次第、変更内容を確認する。
    (新旧理事長の氏名、変更日、変更理由、旧理事長が理事に残るかどうか等)
  2. 役所のホームページや電話で、提出先、様式・必要書類を確認する。
  3. 必要書類(新理事長の印鑑証明書の原本2通、履歴書、医師免許証の写しなど)の手配をする。印鑑証明書については、登記用にも必要なので、2通依頼しましょう。
  4. 確認した様式に従い、手続き書類を作成する。
  5. 押印が必要な書類に押印してもらう。
  6. 役所に必要部数を郵送し、控えの返送を待つ。
  7. 手続きが完了したら、控え等を整理する。
  8. 登記申請を行う(通常、司法書士に依頼)。
  9. 登記完了後、登記届を提出する。

管理者(院長)交代

医療法人は、その開設する全ての診療所の管理者を理事に加えなければなりません。
つまり、医療法人が開設するクリニックの院長は、理事に就任する必要があります。

医療法人の理事でない方が管理者になる場合には、保健所や厚生局への管理者交代手続きの他に、都道府県等への役員変更届の提出が必要になります。
(現理事が管理者になる場合は、役員変更届の提出は不要です)

進め方

  1. 管理者交代が決まり次第、変更内容を確認する。
    (新管理者の氏名、変更日、変更理由等)
  2. 役所のホームページや電話で、提出先、様式・必要書類を確認する。
  3. 必要書類の手配をする。
    – 印鑑証明書の原本
    – 履歴書
    – 医師免許証の写し
    – 臨床研修修了登録証の写し(H16.4.1以降登録の医師、H18.4.1以降登録の歯科医師のみ)
    – 保険医登録票の写し
  4. 確認した様式に従い、手続き書類を作成する。
  5. 押印が必要な書類に押印してもらう。
  6. 役所に必要部数を郵送し、控えの返送を待つ。ただし、保健所については、窓口に免許証の原本を持参して手続きをする場合が多いです。
  7. 手続きが完了したら、控え等を整理する。

日常業務を進める上での注意点

  • スケジュール管理
    • 年間スケジュールを作成し、定時業務の期限を把握しておきましょう。
    • 臨時業務が発生した場合は、速やかに対応計画を立てましょう。
  • 書類の準備と保管
    • 過去の手続き書類は適切に整理し、すぐに参照できるようにしておきましょう。
    • 新たな手続きに必要な書類(印鑑証明書など)は早めに準備しましょう。
    • 控えは必ず取得し、適切に保管しましょう。
  • 関係者との連携
    • 税理士、行政書士、司法書士、など、専門家との連携を密にしましょう。
    • 医療法人内部での情報共有と役割分担を明確にしましょう。
    • 管理者交代の際は、保健所への届出と厚生局への届出を並行して進めましょう。
  • 最新情報の把握
    • 法令改正や手続き変更について、常に最新情報を収集しましょう。
    • 所管の行政機関のウェブサイトや通知を定期的にチェックしましょう。
  • 期限遵守
    • 各手続きの期限を厳守しましょう。
    • 提出が遅れそうな場合は、事前に行政機関に相談しましょう。
  • 押印の確認
    • 押印が必要な書類は、事前に確認し、適切な印鑑を用意しましょう。
    • 実印での押印が必要な場合は、印鑑証明書の準備も忘れずに。
  • 書類の正確性
    • 記入漏れや記載ミスがないか、複数人でチェックしましょう。
    • 特に数字や日付の誤りには注意が必要です。
  • 控えの取得
    • 提出書類の控えを必ず準備し、収受印をもらうようにしましょう。
    • 郵送の場合は、返信用レターパックを同封し、控えの返送を依頼しましょう。
  • 変更内容の確認
    • 役員変更や管理者交代の際は、変更内容(氏名、日付、理由など)を正確に把握しましょう。
    • 関係者全員で情報を共有し、齟齬がないようにしましょう。
  • 専門家への相談
    • 不明な点がある場合は、早めに専門家(行政書士、税理士、司法書士など)に相談しましょう。
    • 特に登記関連の手続きは、司法書士への依頼を検討しましょう。

まとめ

医療法人の日常業務を適切に進めるためには、定時業務と臨時業務それぞれの特性を理解し、計画的に対応することが重要です。
本記事で紹介した進め方や注意点を参考に、自法人の状況に合わせた業務管理体制を構築してください。

特に重要なのは、期限の厳守、書類の正確性、関係者との連携です。これらを意識して業務を進めることで、法令遵守はもちろん、医療法人の円滑な運営にもつながります。

また、日常業務の適切な遂行は、単なる事務作業ではなく、医療法人の健全性を担保し、ひいては患者さんへの良質な医療サービス提供にもつながる重要な取り組みです。

医療法人の運営に携わる皆様には、これらの業務の重要性を十分に理解し、適切な対応を心がけていただきたいと思います。
不明な点がある場合は、所管の行政機関や専門家に相談することをためらわず、確実な業務遂行を目指してください。

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事務所代表・記事監修
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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
現在、行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講中。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版予定。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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