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医療法人の主な行政手続きの例

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医療法人の運営において、様々な行政手続きが発生します。これらの手続きを適切に行うことは、法令遵守と円滑な運営のために非常に重要です。

本記事では、医療法人が直面する主な行政手続きの例を、具体的なフローチャートとともに解説します。

医療法人の定時業務

医療法人には、毎年または定期的に行う必要がある定時業務があります。
主なものとして、毎年の決算届と経営情報の報告と2年に1回の役員改選手続きがあります。

フローチャート

  • 決算のみの年
    1. 書類の作成
    2. 都道府県等への決算届と経営情報の報告提出
    3. 法務局での資産総額変更登記
    4. 都道府県等への登記届提出
  • 役員改選もある年
    1. 書類の作成
    2. 都道府県等への決算届と経営情報の報告提出
    3. 都道府県等への役員変更届提出
    4. 法務局での理事長重任登記および資産総額変更登記
    5. 都道府県等への登記届提出

【注意点】
・決算届の提出期限は、多くの都道府県等で事業年度終了後3ヶ月以内とされています。
・役員の任期は原則2年です。

管理者変更の手続き

医療法人が開設する診療所の管理者が交代する場合、複数の行政機関に届出を行う必要があります。

フローチャート

  1. 都道府県等への役員変更届提出(管理者が理事の場合)
  2. 保健所への診療所変更届提出
  3. 厚生局への保険医療機関変更届提出

【注意点】
・管理者の要件(医師免許、常勤、管理者の兼務制限など)を確認する必要があります。
・変更後の管理者の履歴書や医師免許証の写しなどの添付書類が必要です。

分院開設

医療法人が新たに分院を開設する場合、複数の行政機関での手続きが必要となり、長期にわたるプロセスとなります。

フローチャート

  1. 都道府県等での定款変更認可申請
    1. 理事会・社員総会の開催(定款変更の決議)
    2. 定款変更認可申請書類の作成
    3. 都道府県等への申請
    4. 認可の取得
  2. 法務局での目的変更登記
    1. 登記申請書類の作成
    2. 法務局への申請
    3. 登記の完了
  3. 保健所での診療所開設許可申請および届出
    1. 診療所開設許可申請書類の作成
    2. 保健所への申請
    3. 許可の取得
    4. 診療所開設届の提出
  4. 厚生局での保険医療機関指定申請
    1. 保険医療機関指定申請書類の作成
    2. 厚生局への申請
    3. 指定の取得

【注意点】
・各段階で必要な書類や審査基準が異なるため、事前に十分な確認が必要です。
・建築確認や消防法関連の手続きなど、他の行政手続きも並行して進める必要があります。
・開設までのスケジュールを立て、余裕を持って手続きを進めることが重要です。

移転

医療法人が開設している診療所を移転する場合も、分院開設と同様に複数の行政機関での手続きが必要となります。

フローチャート

  1. 都道府県等での定款変更認可申請
    1. 理事会・社員総会の開催(定款変更の決議)
    2. 定款変更認可申請書類の作成
    3. 都道府県等への申請
    4. 認可の取得
  2. 法務局での目的変更登記
    1. 登記申請書類の作成
    2. 法務局への申請
    3. 登記の完了
  3. 保健所での手続き
    1. 診療所開設許可申請書類の作成(新所在地)
    2. 保健所への申請
    3. 許可の取得
    4. 旧診療所の廃止届提出
    5. 新診療所開設届の提出
  4. 厚生局での手続き
    1. 旧診療所の保険医療機関廃止届提出
    2. 新診療所の保険医療機関指定申請書類の作成
    3. 厚生局への申請
    4. 指定の取得

【注意点】
・移転先の建物が診療所の構造設備基準を満たしているか事前に確認が必要です。
・移転に伴い診療科目や診療時間等を変更する場合は、追加の手続きが必要となります。
・患者への周知や医療機器の移転など、行政手続き以外の準備も並行して進める必要があります。

増床・病床種別の変更

診療所から病院への転換や、病床数・病床種別の変更を行う場合も、複数の行政機関での手続きが必要となります。

フローチャート

  1. 都道府県等での事前協議
    1. 地域医療構想との整合性の確認
    2. 必要書類の準備
    3. 都道府県等との協議
  2. 都道府県等での定款変更認可申請(必要な場合)
    1. 理事会・社員総会の開催(定款変更の決議)
    2. 定款変更認可申請書類の作成
    3. 都道府県等への申請
    4. 認可の取得
  3. 保健所での手続き
    1. 病院開設許可申請または変更許可申請書類の作成
    2. 保健所への申請
    3. 許可の取得
    4. 開設届または変更届の提出
  4. 厚生局での手続き
    1. 保険医療機関変更届の提出
    2. 必要に応じて新たな施設基準の届出

【注意点】
・増床や病床種別の変更は、地域医療構想や医療計画との整合性が求められます。
・構造設備基準や人員配置基準が変わる場合があるため、事前に十分な確認が必要です。
・工事を伴う場合は、建築確認申請などの手続きも必要となります。

診療科目の追加・変更

診療科目を追加または変更する場合も、行政手続きが必要となります。

フローチャート

  1. 保健所への届出
    1. 診療所変更届書類の作成
    2. 保健所への提出
  2. 厚生局への届出
    1. 保険医療機関変更届書類の作成
    2. 厚生局への提出
  3. 必要に応じて施設基準の届出
    1. 新たな施設基準の届出書類の作成
    2. 厚生局への提出

【注意点】
・一部の診療科目は、開設者や管理者の要件が厳しくなる場合があります。
・診療科目の標榜には、医療法で定められた規定があるため、事前に確認が必要です。
・新たな診療科目に対応する医療機器の導入が必要な場合は、別途届出が必要となることがあります。

まとめ

医療法人の行政手続きは多岐にわたり、それぞれの手続きで複数の行政機関との対応が必要となります。
これらの手続きを適切に行うためには、以下の点に注意が必要です。

  1. 事前の十分な情報収集と計画立案
  2. 関係する行政機関との事前相談
  3. 必要書類の正確な準備
  4. 期限の厳守
  5. 手続きの進捗管理
  6. 専門家(行政書士、弁護士、税理士など)への相談

また、これらの手続きは単なる事務作業ではなく、医療法人の運営方針や地域医療への貢献と密接に関連しています。手続きを進める際は、常に医療法人の理念や目標、地域のニーズを念頭に置くことが重要です。

行政手続きは煩雑で時間がかかることもありますが、これらを適切に行うことで、法令遵守はもちろん、安定した医療法人運営と質の高い医療サービスの提供につながります。
本記事で紹介した例を参考に、自院の状況に合わせた適切な対応を心がけてください。

最後に、医療を取り巻く環境や法令は常に変化しています。
最新の情報を常にキャッチアップし、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、適切な対応を心がけることが大切です。

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事務所代表・記事監修
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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
現在、行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講中。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版予定。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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