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医療法人の行政手続きの進め方

手続きSTEP1,2,3

医療法人の運営において、行政手続きは避けて通れない重要な課題です。適切に手続きを進めることで、スムーズな運営が可能になり、トラブルを未然に防ぐことができます。

本記事では、医療法人の行政手続きを進める上で特に重要な6つのポイントについて詳しく解説します。

所管の確認

行政手続きを進める上で、まず重要なのは所管の確認です。
行政の縦割り構造を理解し、どの役所に申請や届出をすべきかを正確に把握することが非常に重要です。

主な所管と役割

  • 都道府県等:医療法人の設立認可、定款変更認可など
  • 法務局:登記関連の手続き
  • 保健所:診療所開設許可、各種届出など
  • 厚生局:保険医療機関指定など

所管の確認方法

  • 医療法人の所管
    – 原則として、医療法人の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県等
    – 1ヶ所のみ
  • 各診療所の所管
    – 診療所の所在地を管轄する保健所と厚生局
    – 診療所ごとに異なる場合がある

(所管確認の例)
主たる事務所が東京都大田区にあり、クリニックが東京都大田区と神奈川県鎌倉市にある場合

– 医療法人:東京都
– 診療所①(東京都大田区)
 - 保健所:大田区保健所
 - 厚生局:東京厚生局(関東信越厚生局東京事務所)
– 診療所②(神奈川県鎌倉市)
 - 保健所:鎌倉市保健所(神奈川県鎌倉保健福祉事務所)
 - 厚生局:神奈川厚生局(関東信越厚生局神奈川事務所)

5W1Hの確認

手続きを進める際は、5W1H(When, Where, Who, What, Why, How)を明確にすることが重要です。

  1. When(いつ):手続きの時期
    – 事前申請か事後届出か
    – 期限はいつか
  2. Where(どこで):申請先・届出先
    – 所管の役所(都道府県庁、保健所、厚生局等)
    – 都道府県庁への手続きでも、保健所経由で提出する場合がある
  3. WWho(誰が):申請者・届出者
    – 医療法人自体か
    – 管理者等の個人か
  4. What(何を):手続き名
    – 申請や届出の具体的な内容
  5. Why(なぜ):法的根拠
    – 手続きの根拠となる法令
  6. How(どのように):様式
    – 所定の様式を使用
    – 異なる様式での提出は受理されない可能性がある

役割分担

医療法人の手続き業務の役割分担を明確にすることが重要です。

役割分担のポイント

  • 一貫性の確保
    – 可能な限り、同じ担当者が継続して業務を遂行
  • 責任範囲の明確化
    – 医療法人、行政書士、司法書士などの間で責任範囲を明確に分ける
  • 業務分担一覧の作成
    – 決算届、役員変更届、資産総額変更登記などの担当者を明確にする
  • 突発的な業務への対応
    – 臨時の対応についても、誰が担当するか事前に決めておく
  • 定期的な見直し
    – 年に1回程度、役割分担を見直し、必要に応じて調整する

(役割分担の例)
– 登記関連:司法書士
– その他の手続き:行政書士または医療法人の事務担当者

押印の要否

近年、押印不要の手続きが増えていますが、まだ押印が必要なケースも多くあります。

押印に関する注意点

  1. 事前確認
    – 各手続きについて、押印の要否を事前に確認する
  2. 押印準備
    – 押印が必要な場合は、早めに押印の手配をする
  3. 電子署名の可能性
    – 電子申請が可能な手続きについては、電子署名の利用も検討する
  4. 押印廃止の動向把握
    – 押印廃止の動きは今後も続く可能性があるため、最新情報を常にチェックする

控えについて

すべての手続きにおいて、控えや副本を確実に入手することが非常に重要です。

控えに関する注意点

  • 控えの準備
    – 役所への提出分とは別に、医療法人用の控えを準備する
  • 収受印の確認
    – 控えには必ず収受印をもらう
  • 郵送の場合の対応
    – レターパックを利用し、控えや副本の返送を依頼する
    – 重要書類の場合はレターパックプラスを使用
  • 電子申請の場合
    – 受付完了画面のスクリーンショットを保存する
    – 受付番号を記録する
  • 控えの保管
    – 控えは適切に整理し、安全な場所に保管する

手続き書類の整理

手続き完了後は、控えや副本を適切に整理することが重要です。

整理のポイント

  • ファイリングシステムの構築
    – 手続きの種類ごと、年度ごとにファイルを分ける
  • デジタル化
    – 重要書類はスキャンしてデジタルデータとしても保存する
  • インデックス作成
    – 書類の概要と保管場所を記したインデックスを作成する
  • 定期的な見直し
    – 年に1回程度、書類の整理状況を確認する
  • 手続き一覧表の作成
    – どの手続きが行われたかを簡潔に確認できる一覧表を作成する

行政手続きの具体例:分院開設の流れ

医療法人が分院を開設する場合の具体的な手続きの流れを例に、上記のポイントがどのように適用されるか見ていきましょう。

  1. 都道府県等での定款変更認可申請
    – 所管:都道府県等
    – 5W1H:事前申請、医療法人が申請者、医療法に基づく
    – 控え:申請書の写しに収受印をもらう
  2. 法務局での目的変更登記
    – 所管:法務局
    – 役割分担:通常、司法書士に依頼
    – 押印:要
  3. 保健所での診療所開設許可申請および届出
    – 所管:開設地の保健所
    – 5W1H:事前申請(許可)と事後届出(開設届)
    – 控え:許可書や副本の原本を確実に受け取る
  4. 厚生局での保険医療機関指定申請
    – 所管:開設地を管轄する厚生局
    – 5W1H:事前申請、様式は厚生局指定のものを使用
    – 控え:申請書の写しを保管し、指定通知書を確実に受け取る

この流れを通じて、所管の確認、5W1Hの明確化、役割分担、押印の要否確認、控えの取得、書類の整理を適切に行うことが重要です。

まとめ

医療法人の行政手続きを適切に進めるためには、以下の6つのポイントに注意を払うことが重要です。

  1. 所管の確認
  2. 5W1Hの確認
  3. 役割分担
  4. 押印の要否
  5. 控えについて
  6. 手続き書類の整理

これらのポイントを押さえることで、手続きのミスや遅延を防ぎ、スムーズな医療法人運営が可能になります。
また、適切に整理された書類は、将来の手続きや監査への対応にも役立ちます。

行政手続きは煩雑に感じられることもありますが、これらは医療の質と安全性を確保するための重要なプロセスです。
本記事で紹介した方法を参考に、自院の状況に合わせた手続きの進め方を検討し、実践してください。

最後に、医療を取り巻く環境は日々変化しています。法令改正や新たな制度の導入など、常に最新の情報をキャッチアップし、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、適切な対応を心がけましょう。
適切な行政手続きは、医療法人の安定した運営と、患者さんへのより良い医療サービスの提供につながります。

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事務所代表・記事監修
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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
現在、行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講中。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版予定。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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