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医療法人の組織構成(社員と役員)

組織の構成

医療法人の適切な運営のためには、その組織構成を正しく理解することが不可欠です。

本記事では、医療法人の主要な構成要素である社員と役員について詳しく解説します。

医療法人の組織構成の概要

医療法人の組織構成は、主に以下の要素から成り立っています。

  1. 社員(医療法人社団の場合)
  2. 役員(理事・監事)
  3. 理事会
  4. 社員総会(医療法人社団の場合)

これらの構成要素がどのように関係し、どのような役割を果たしているのか、詳しく見ていきましょう。

役員と社員

医療法人には、役員として理事と監事が置かれます。また、医療法人社団の場合は社員が存在します。

  • 役員
    理事:3人以上
    監事:1人以上
    理事の中から理事長を1名選出
  • 社員(医療法人社団の場合)
    原則として3人以上必要

役員の詳細

  • 理事
    – 人数:3人以上(上限は定款で定める)
    – 選任方法:社員総会で選任
    – 任期:原則2年
    – 役割:
     - 医療法人の業務執行の決定
     - 理事の職務執行の監督
     - 理事長の選定及び解職
  • 理事長
    – 人数:1人
    – 選任方法:理事会で選定
    – 役割:
     - 医療法人を代表
     - 医療法人の業務を執行
  • 監事
    – 人数:1人以上(上限は定款で定める)
    – 選任方法:社員総会で選任
    – 任期:原則2年
    – 役割:
     - 理事の職務執行を監査
     - 医療法人の財産状況を監査
     - 不正行為や法令・定款違反を発見した場合、社員総会や理事会に報告

社員(医療法人社団の場合)

医療法人社団における社員は、一般的な会社における従業員とは異なる概念です。

定義:医療法人社団を構成する者
人数:原則として3人以上
権利
 - 社員総会における議決権
 - 医療法人の運営に関する重要事項の決定に参加
義務
 - 医療法人の目的達成のために協力する義務

理事会

理事会は、理事全員で構成される合議体です。

構成:全ての理事
開催頻度:定款で定める(通常は年に数回)
主な権限
 - 医療法人の業務執行の決定
 - 理事の職務執行の監督
 - 理事長の選定及び解職
決議方法
 - 理事の過半数が出席し、その過半数で決議
 - 特別の利害関係を有する理事は議決に加わることができない

社員総会(医療法人社団の場合)

社員総会は、医療法人社団における最高意思決定機関です。

構成:全ての社員
開催頻度:定時社員総会(年2回以上)と臨時社員総会
主な権限
 - 定款の変更
 - 理事・監事の選任・解任
 - 貸借対照表、損益計算書(正味財産増減計算書)の承認
 - 基本財産の処分
決議方法
 - 総社員の過半数が出席し、その過半数で決議
 - 定款変更など重要事項については、より厳格な要件が定められる場合がある

株式会社との比較

医療法人の組織構成は、株式会社と類似点が多くあります。以下に主な比較を示します。

  • 最高意思決定機関
    医療法人社団:社員総会
    株式会社:株主総会
  • 業務執行機関
    医療法人:理事会
    株式会社:取締役会
  • 代表者
    医療法人:理事長
    株式会社:代表取締役
  • 監査機関
    医療法人:監事
    株式会社:監査役
  • 構成員
    医療法人社団:社員
    株式会社:株主

しかし、大きく異なる点として、議決権の割合があります。

– 医療法人社団:1人1票
– 株式会社:出資比率に比例

この違いにより、医療法人では特定の個人が強大な権限を持つことを防ぎ、より公平な運営を目指しています。

注意点

  • 管理者の理事就任
    – 医療法人が開設する医療機関の管理者(院長など)は、必ず理事に加える必要があります。
    – 管理者が理事を辞任した場合、管理者の職も失います。
  • 理事と社員の関係
    – 理事と社員は別の概念です。理事であっても必ずしも社員である必要はありません。
    – ただし、実務上は理事を社員にすることが多いです。
  • 社員の重要性
    – 社員は医療法人社団の根幹を成す存在です。社員の構成によっては、医療法人の運営方針が大きく左右される可能性があります。
    – 例えば、理事長が100%出資していても、他の社員が多数決で理事長の意向に反する決定をすることが可能です。
  • 利益相反取引
    – 理事が医療法人と取引を行う場合(利益相反取引)、理事会の承認が必要です。
    – これは、医療法人の利益を守るための重要な規定です。
  • 役員の欠格事由
    – 医療法には役員の欠格事由が定められています。例えば、医療に関する法令違反で罰金刑を受けた者などは、一定期間役員になれません。

組織構成の見直し

医療法人の組織構成は、設立時に決定されますが、その後の状況変化に応じて見直すことが重要です。

見直しのポイント

  • 社員構成
    – 分院展開している医療法人で、分院の管理者を理事に選任する際に、自動的に社員にしてしまうケースがよく見られます。
    – これにより、意図せず医療法人の運営方針決定権が分散してしまう可能性があります。
  • 理事の人数
    – 医療法人の規模拡大に伴い、理事の増員を検討する必要があるかもしれません。
    – ただし、理事の人数が多すぎると意思決定が遅くなる可能性もあります。
  • 監事の役割強化
    – 医療法人の透明性向上のため、監事の役割を強化することを検討しても良いでしょう。
  • 理事会の開催頻度
    – 医療法人の事業拡大に伴い、理事会の開催頻度を増やすことを検討しましょう。

まとめ

医療法人の組織構成を正しく理解し、適切に運営することは、医療法人の健全な発展と地域医療への貢献にとって非常に重要です。
社員と役員の役割を明確に理解し、それぞれが適切に機能するよう努めることが求められます。

また、医療法人の成長や環境の変化に応じて、組織構成を柔軟に見直していくことも大切です。
定期的に組織構成を点検し、必要に応じて変更を加えることで、より効果的で透明性の高い医療法人運営が可能となります。

医療法人の運営に携わる方々には、これらの点を十分に理解し、適切な組織運営を心がけていただきたいと思います。
不明な点がある場合は、行政書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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事務所代表・記事監修
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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
現在、行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講中。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版予定。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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