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医療法人の臨時業務(管理者交代手続き)

医療に従事する女性医師

医療法人において、診療所の管理者(院長)が交代する場合、適切な手続きを行うことが非常に重要です。

本記事では、管理者交代に伴う手続きについて、具体的な方法と注意点を詳しく解説します。

管理者交代手続きの概要

管理者が交代した場合、通常、以下の3つの手続きが必要となります。

  • 役員変更届(都道府県等)
  • 診療所開設届出事項変更届(保健所)
  • 保険医療機関届出事項変更届(厚生局)

これらの手続きは、同時並行で進めることが可能です。

管理者交代手続きの流れ

  • 役員変更届 → 都道府県等
  • 診療所開設届出事項変更届 → 保健所
  • 保険医療機関届出事項変更届 → 厚生局

【注意】
上記以外にも、例えば麻薬の手続きなど、クリニックの状況に応じて追加の手続きが必要な場合があります。
各種手続きの状況を確認し、漏れがないように注意しましょう。

管理者交代に関する重要な注意点

  1. 2ヶ所以上の診療所での兼務管理は原則禁止です(医療法第12条第2項)。
  2. 管理者は理事に就任しなければなりません(医療法第46条の5第6項)。

各手続きの詳細

役員変更届(都道府県等)

新しい管理者が医療法人の理事でない場合、役員変更届の提出が必要です。

提出書類

  • 役員変更届(表紙)
  • 臨時社員総会議事録
  • 新役員関連書類(印鑑証明書原本、就任承諾書、履歴書など)
  • 旧役員辞任届

【注意点】
– 印鑑証明書の提出や実印の押印が必要な都道府県等もあります。
– 辞任届の押印が必要な場合もあるため、管理者交代前に前任管理者から辞任届をもらっておくと良いでしょう。

役員変更届(表紙)の記載例


医療法人役員変更届

  1. 変更した役職名:理事
  2. 就任者氏名:〇〇 〇〇
  3. 退任者氏名:▲▲ ▲▲
  4. 変更理由:管理者交代のため
  5. 変更年月日:令和○年○月○日

診療所開設届出事項変更届(保健所)

保健所には、管理者の変更届を提出する必要があります。

提出書類

  • 診療所開設届出事項変更届(表紙)
  • (歯科)医師免許証の写し(原本提示が必要な場合が多い)
  • 臨床研修修了登録証の写し(該当する場合のみ)
  • 職歴書(履歴書)
  • 医療法人の理事になっていることが確認できる書類(議事録等)

診療所開設届出事項変更届(表紙)の記載例


診療所開設届出事項変更届

  1. 開設者:医療法人社団○○会
  2. 名称:○○クリニック
  3. 開設の場所:東京都○○区○○町1-2-3
  4. 開設許可年月日及び番号:令和○年○月○日 保生医第○○○号
  5. 変更した理由:管理者交代のため
  6. 変更年月日:令和○年○月○日
  7. 変更事項:管理者
  8. 変更前:▲▲ ▲▲
  9. 変更後:〇〇 〇〇

保険医療機関届出事項変更届(厚生局)

保険医療機関の場合、厚生局にも管理者の変更届を提出する必要があります。

提出書類

  • 保険医療機関届出事項変更届
  • 変更後管理者の保険医登録票の写し

保険医療機関届出事項変更届の記載例


保険医療機関届出事項変更届

  1. 医療機関コード:1234567
  2. 管理者
    変更前:▲▲ ▲▲
    変更後:〇〇 〇〇
  3. 変更年月日:令和○年○月○日
  4. 保険医
    氏名:〇〇 〇〇
    変更日:令和○年○月○日
  5. 勤務者・勤務形態変更
    勤務医
    氏名:〇〇 〇〇
    変更日:令和○年○月○日
  6. 退職者
    氏名:▲▲ ▲▲
    退職日:令和○年○月○日

手続き時の注意点

  • 書類の正確性
    – 氏名、住所、日付などの情報は正確に記入しましょう。
    – 複数人でチェックし、記入ミスを防ぎましょう。
  • 期限の遵守
    – 各手続きには提出期限があります。余裕を持ってスケジュールを立てましょう。
  • 原本の取り扱い
    – 医師免許証など、原本提示が必要な書類については、窓口での手続きが必要な場合があります。
  • 印鑑の準備
    – 実印での押印が必要な場合があるため、事前に確認し準備しましょう。
  • 添付書類の確認
    – 必要な添付書類が揃っているか、事前に十分確認しましょう。
  • 施設基準への影響
    – 管理者交代に伴って施設基準の届出の要件を満たせなくなる場合があります(例:新しい管理者が必要な研修を受講していない場合など)。
  • その他の変更手続き
    – 麻薬施用者免許や各種契約の変更など、管理者交代に伴う他の手続きも忘れずに行いましょう。

よくある質問と回答

Q1: 管理者交代の手続きはいつまでに行う必要がありますか?
A1: 具体的な期限は手続きによって異なります。各役所に確認しましょう。
Q2: 新管理者が医療法人の理事でない場合、どのような手続きが必要ですか?
A2: 新管理者を理事に選任する必要があります。そのため、社員総会で理事選任の決議を行い、都道府県等に役員変更届を提出する必要があります。
Q3: 管理者交代に伴い、診療報酬の施設基準に影響がある場合はどうすればよいですか?
A3: 新管理者が施設基準の要件を満たしていない場合、速やかに地方厚生局に必要な届出を行う必要があります。場合によっては、一時的に施設基準を満たせなくなる可能性もあります。
Q4: 管理者交代の際、前任者の辞任届が得られない場合はどうすればよいですか?
A4: 都道府県等によっては、保健所の管理者変更届の控えを提出することで代替できる場合があります。事前に都道府県等に相談し、対応方法を確認しましょう。

まとめ

管理者交代の手続きは、医療法人の運営において非常に重要です。
適切に手続きを行うことで、法令遵守はもちろん、円滑な医療提供体制の維持につながります。

本記事で紹介した手続き方法や注意点を参考に、漏れのない対応を心がけてください。
また、不明な点がある場合は、所管の行政機関や専門家(行政書士など)に相談することをためらわず、適切な手続きの実施を目指しましょう。

管理者交代は単なる事務手続きではなく、医療法人の運営体制に関わる重要な事項です。
この機会に組織体制を見直し、より効果的な運営につなげることも考えられます。

適切な管理者交代手続きの実施は、医療法人の健全な運営と、ひいては質の高い医療サービスの提供につながります。
本記事が皆様の業務の一助となれば幸いです。

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事務所代表・記事監修
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中村 弥生(なかむら やよい)

渋谷区の医療法人の事務長として、総務・経理・各種手続き業務を統括。
退職後、税理士事務所勤務を経て、2006年に行政書士事務所を開業。以来、医療法人専門の行政書士事務所として業務を行っている。
現在、行政書士向けに「医療法人の行政手続き実務講座」を開講中。
2025年1月、書籍「はじめてでもミスしない いちばんわかりやすい医療法人の行政手続き」を出版予定。

【実績】 医療法人の設立100件以上、定款変更300件以上。保健所、厚生局手続き300件以上。役員変更や決算届出等2,000件以上。

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